以前から書こうと思っていたウェブにおける「メディア」という言葉のあいまいさについて書いていきます。
(※ちなみにウェブメディアの事前チェックの是非についてはあまり触れないので、あしからず)
楽しげにツイッターやってる平日の夕方、頭の片隅に「メディアの記事の事前チェック問題」があるんだけど、何か書いておこうかなあ…。書こうと思った瞬間にフジロックだったので流れてしまった。。
— くいしん (@Quishin) 2018年8月9日
事前チェックそのものというよりは、それをもとに、ウェブにおける「メディア」という言葉があいまいすぎて、ユーザーはもちろん、作り手側でもその意味をわかっていない人が多いよね、という話をしたい感じです。 https://t.co/G1dFLvpMvT
— くいしん (@Quishin) 2018年8月9日
きっかけは、ある報道寄りのウェブメディアの記者の方のツイート。ちょっとこれ、ツイートを引用すれば話は早いのですが、改めてみたら当初見たときより炎上していたのでツイートそのものの引用は避けます。
文章だけ引用させていただこうと思います。
「記事の事前チェックをさせて当然」
という考え方はマジで害悪以外の何者でもないと思う。
それを言わせるのは恥だと思うべき、メディアも、取材された側も。
そうさせることでメディアは自らの価値を損ない、「報道」の価値も損なっている。
主旨は理解できるのですが「メディア」という言葉選びには少々疑問があります。せめて「報道メディア」とでも書けばだいぶ印象は違ったのではないでしょうか。
このツイートはこのあと炎上して、いろいろと議論がなされていたのですが、記者さんは自らのおかれた環境の話をしながら「メディア」という言葉だけを軸に右往左往するので、いつまで経っても着地しないし、議論は平行線のまま。純粋に、編集力と語彙の不足だなあ、と思います。
(ちなみにその記者さんは、カルチャーに詳しい方で、僕はすごく好きです)
ここで言う「メディア」、または「ウェブメディア」という言葉には、さまざまな形態の紙媒体のウェブバージョンのものが含まれます。
あらゆる種類の
- 書籍
- 雑誌
は、もちろん、
- 新聞
- 広報誌
- フリーペーパー
- 広告チラシ
を、ウェブに置き換えたものが、ウェブ上ではなぜか「メディア」「ウェブメディア」と一括りに呼ばれています。また、「ブログ」は限りなく「個人で制作したフリーペーパー」に近いニュアンスの媒体ですが、「ウェブメディア」と「ブログ」の垣根はほとんどないといっていいでしょう。
これが、現在の日本のウェブにおける「メディア」に対する誤解の根本原因です。
しかも恐ろしいことに、読み手だけならしようがないのですが、作り手のほうもこれをいまいち理解していない人が多々いるというのが現状、というのが僕の肌感です。
書店や図書館に行けば、見栄えも表紙もまったく違うのでそれらの紙媒体が「異なるもの」と理解できるのですが、ウェブの場合はほとんどの場合はすべてスマホ上で読めます。そのため関係者でなければ、当たり前にその差異を認識することができません。
たとえば、書店で新書を手にとって「写真が掲載されていないじゃないか!」「カラーページがないぞ!」と文句を言う人はいませんよね? アイドルの写真集を手にとって、「文章が少ない!」と文句を言う人はいませんよね?
こうやって言うとかなりおかしいのですが、これが日常的に行われているのが現在のウェブメディア周辺の状況です。
「記事をコンテンツと呼ぶのは、愛がない」
「ウェブコンテンツを記事と呼ぶのは、テキストのことしか考えていないライター」
「アドセンスを貼るか否か問題」
「写真に気を使わないウェブメディアはダメ!」
「テキストが弱い(文章力が低い)」
こういった類の言葉もすべて「いや、媒体の性質によって、正解が違うので……」としか、思えません。
また、「雑誌っぽいウェブメディア」なんて言い回しもよく聞きますが……雑誌にもいろいろあります。MERYは女性ファッション誌だし、もっとニッチな専門誌をウェブに置き換えたウェブメディアもたくさんあります。
そのあたりをメディア人ひとりひとりが考えた上で、「報道メディアで記事を事前チェックするのは〜」と言って議論を深めていくのがよいのではないかと思います。「メディア」だけだと、言葉の持つ意味が広すぎるんです。
ひとつの結論としては、メディア人がメディアのことを知らなすぎるという問題があります。僕はここに関しては、メディアを愛する者として少々苛立ちを覚えています。
あなたは、週刊誌を手にとって「低俗だ!」とか、文芸誌を手にとって「意識高すぎ(笑)」とか言ってないでしょうか?
「そりゃそうでしょ、そういうものなんだから」と僕は思います……。
せめてメディア人には、メディアの特性を理解した上で、喧々諤々やっていただきたいものです。
まさに「メディアリテラシー」を携えて、各々やっていきましょう。
こちらからは以上です。