『火花』Advent Calendar 2015 #読み終わった本リスト

公開日: : 最終更新日:2016/08/28


僕はある時期、品川区の西大井に住んでいた。高校を卒業して、吉本興業の養成所であるNSC東京に通っていたからだ。養成所が西大井にあったので、すぐ近くに住んでいた。しかし、養成所とは名ばかりで、それはまるで「養成」してくれない。純然たる丸投げの姿勢。芸能界は厳しい。

※『火花』のネタバレがあります

『火花』を書いた又吉直樹さんは、このNSC東京の5期生である。僕はその5年後、10期生としてNSCに通っていた。「華の10期」と呼ばれる同期は、オリエンタルラジオ、トレンディエンジェル、はんにゃ、フルーツポンチ、ガリバートンネルを始めとした、錚々たる面々だ。ここで名前を挙げたコンビは、多かれ少なかれ、最初の数年でその頭角を表していた、と思う。

そこで思うのは『火花』の主人公は、世間からしたら「全然売れていない芸人」かもしれないが、たった数年だとしても「芸人」の見習いとして生きた自分からすると、「よく認められていた側の人」である。仮に吉本の場合、東京と大阪合わせて1000人ほどの同期がいる。主人公はトップ30に入るくらいの才能だったはずだ。物語の冒頭に出てくる「花火大会の営業」は、そこそこ売れなければできない仕事だし、お笑い雑誌の新人紹介コーナーに掲載されるのも「凄いこと」だ。

正直な話、このギャップをいまだ埋められずにいる。部屋に置かれたその本を、僕はページを開くことなく数ヶ月放置している。なんなら『火花』が「売れない芸人の話」と世間で認知されているということ自体が本当かどうかわからない。僕が自分で、そういう話だと勝手に認識しているだけだ。そう思っていたところに、花火大会の営業や雑誌掲載の話が出てきたから、「おう、これは結構売れた人の話なんだな」と思ってしまったということだ。

そして、僕は、まだ『火花』を読み終えていない。このエントリは「#読み終わった本リスト」のAdvent Calendar 2015の中のひとつなわけだけど、僕はまだ『火花』を読み終えていない。

 

これは先ほどのツイートだ。説明は不要。このツイートは、とにかく明るい安村さんへのリスペクトを表したものだ。M-1グランプリでトレンディエンジェルが優勝した。今年は(とにかく明るい)安村さん(6期)、芥川賞作家になった又吉さん(5期)、トレンディ(10期)とNSC東京勢の芸人が大活躍だったと言えるだろう。

NSC東京でこれを読んでいる多くの人が知っているであろう芸人というと、1期、品川庄司さん。2期、ハローバイバイさん。3期、トータルテンボスさん。4期、インパルスさん、ロバートさん、森三中さん、椿鬼奴さん。5期、ピースさん、平成ノブシコブシさん、三瓶さん。9期、ハリセンボンさん。そして10期。11期、エド・はるみさん、チョコレートプラネット。そういえば関係ないけど、チョコレートプラネットの松尾さんは高校の先輩だ。12期、渡辺直美さん。

20年の歴史がある東京校でも「誰でも知っている名前」はこんなものである。その下には僕を含めた「毎年1000人くらいの面白くない奴」がいる。そいつらは「芸人だったこと」を人生でどうやって回収するんだろうか。そんなことは考えもしない奴が大半だろうけど。

僕は『火花』の主人公が最後にどうなるか、人から聞いて知っている。彼は、芸人を辞める。たぶん「普通に働く」という選択をするのだったと思う。詳しくは、読んでいないから知らない。この小説を読み終えたら、自分が「芸人」として生きた数年を回収できるだろうか。このエントリを公開したら、またページをめくってみようと思う。

追伸1
え、マジか。全然「読み終わった本」の話じゃない。

追伸2
2015年はあまり本を読まなかったので2016年はたくさん読みたい。

追伸3
この企画、まだ空席あります。
#読み終わった本リスト Advent Calendar 2015

追伸4
主宰のはせさんはこちら。
https://twitter.com/hase0831

追伸5
はせさんは女性ですよ。


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